【私があなたに!2】3.日和のホンネ_2

「ただいまー」
「姉ちゃんおかえりー」

 美桜と話しをしてから帰ったとはいえ、いつもは部活の後に寄り道してもっと帰りの遅い弟が、今日は珍しく先に家に着いていた。
 
「おー。|優《ゆう》も、もう帰ってたのかー。おかえりー」
「今日部活早く終わったから。って、姉ちゃん部活やってないのに帰り遅くね? これはあれか! ついに彼氏ができたか⁉︎ 姉ちゃんにも秋だけど春がきたんだなー。お母さん、姉ちゃんに彼氏ができたってー」
「おー、おめでとう。そりゃー女子高生なんだから、彼氏の一人や二人はいなくちゃ!」

(なんなんだ。この家族……)

 先日、中学生の弟の優に彼女がいることが判明して、あれ依頼、今まで姉として絶対的なポジションを守っていたつもりだったけど、何だか少し負けた気がしてしまっている。
 彼女のこともまだ詳しく聞けてなし、いっそ、男子中学生特有の妄想であってほしいとも思う。
 アイドルとかに憧れてればいいのに…………叶わぬ恋として…………。

「残念ながら違いますー。いつもは友達の付き合いもあるけど、最近は図書室に通ってるんだよ。どーだ、偉いだろー」
「お母さん! 姉ちゃんの彼氏だか彼女だかわかんないけど、同じ学校の人だってー!」
「なにー! そりゃー盛り上がるから詳しく聞かせて! いやーあると思ってたんだよ。ん? でもそれって先生じゃないよね? それはまだちょっと早いんじゃないかなー。そうだ! 今度連れてきてよ。大歓迎!」
「………………くたばれ」

 なんなんだ、うちの家族は。
 以前はこんなんじゃなかった気がするけど、なんだか、弟が隠してたえっちな本が見つかった事件のあたりから、うちの家族はおかしくなっている気がする。
 なんだか、踏み越えちゃいけないラインを超えて、プライバシーというか、親と子っていう距離感がバグってしまったような…………。
 
(まったく。あのエロガキが部屋にえっちな本を隠してなければ、こんなことには……)

 私がお母さんにバレるように仕向けたことは……まぁ忘れたので、自分の部屋に鞄を下ろして一息つく。
 今日は中間テストの最終日だったので宿題もない。

(やっぱり美桜、変わったなぁ)
   
 美桜は本当に変わったと思う。
 あれからそんなに時間は経っていないけど、自分の中にはっきりとした芯が通ったような感じがする。
 ひどい自暴自棄になって、それでも自分を見つめ続け、自分の母親に見切りをつけるという決断を行い、そして、はっきりとした自分の目標を持った。
 今はその目標の達成に必要不可欠な勉強を、しっかりと頑張っている。
 本当にすごいと思うけど、それだけ美桜は母親と離れるためにあの家から出たいのだろう。

(県外の大学かぁ…………)

 美桜の目標をふと考えて、自分に当てはめてみる。
 先ほど家族に対する文句を言ってしまったが、これでも家族の仲は良好だと思っている。
 なので、自分の母親に見切りをつけてまずは精神的な自立をし、最終的には金銭的にもすべてから独立するという美桜の目標を言葉ではわかるけど、母親と険悪であるという状況の実感がない私では本当の意味で理解することはできない。
 でも「その気持ち分かる」など、変に同意をしたら、それこそ美桜は私のことを嫌悪するだろう。
 私は普段、友達に対してそんなような返事ばかりしているけど、結局のところ、相手のことを全部理解することなどできないのだ。
 
(でも私は…………ずるいのかな)

『不変なものはない』とあの時、美桜は言った。確かにそうだと思う。
 美桜との関係だって、今後変わっていくかもしれない。
 未来は分からない。
 であれば、私はどうしたらいいのだろうか。
 
 友達と必要以上に仲良くなって、万が一、またその友達から心無い言葉を投げかけられたら……。
 万が一、裏切られるようなことになったら……そうなるのが怖い。
 
 だから私は、相変わらず必要以上に友達と仲良くならないようにしている。
 
 でも、なぜ私はマイナスのことばかり考えているのだろう。
 
 仲良くなれば、きっと楽しいことも増えていくだろう。
 美桜みたいな友達が増えることは嬉しいことじゃないか。
 美桜の言うとおり『不変なものはない』のであれば、何を恐る必要があるのだろう。
 たとえ、私が美桜意外の友達とダメになったとしても、きっと美桜ならそばにいてくれるのではないかという根拠のない確信も今はある。
 
(いや、答えは分かっている)

 結局、私は優劣がつけられないのだ。
 昔、友達百人できると思っていた私は、百人全員と心から分かりあえる友達になれると信じて疑わなかった。
 でも、成長するにつれ、そんなことは難しいことを知った。
 単純に無理なのだ。
 仲のいい友達を百人も作ったら、その百人と平等に仲良くなってしまったら、単純に私の日常は壊れてしまうだろう。
 体力も、心も、もしかしたらお金だって…………何もかもが追いつかない。
 私が、仲が良かったともだちから、裏切られてしまったのも必然だったのかもしれない。
 
 このことは美桜には言っていない。
 美桜に自分の素直な気持ちをぶつけて、あの時は、友達と本当の意味で仲良くなりたいなどと言ってしまったけど、私も自分の気持ちに向き合って、考えて、考えた結果、結局私は、友人関係というものを面倒だと感じてしまった。
 
 好きな友達、嫌いな友達、もっと仲良くなりたい友達、疎遠でもいいやと思う友達、そんな優劣を私につけることはできない。
 
 考えてもわからない。
 であれば、考えるだけ時間の無駄だ。
 だったら、今のままでいいじゃないか。
 
 特別な友達は…………美桜だけでいい。
 
 そう答えが出てしまった。
 こんな私は、これからどうしたらいいのだろうか。

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