「ちひろーー、いやもう、図書室最っ高!」
翌朝、登校中にちひろを見つけたとたん、駆け寄って叫んでしまった。
「うあぁぁ。もうびっくりした。あ、みおちゃんか、おはよう。朝からそんなに大きな声出してどうしたの」
「あ、ごめんごめん、おはよう」
嬉しくて、ついついはしゃいでしまい、ちひろを驚かせてしまった。
ただ、驚いたせいか、私を昔のあだ名で呼んでくれたので結果オーライ。
私も昔みたいに「ちーちゃん」って呼んだらどんな顔するかな。
「久しぶりに、みおの嬉しそうな顔を見た気がする。やっぱりみおは、そういう顔の方がいいよ。それで、どうしたの?」
私が何か別のことを考え始めたのを察したのか、ちひろが水を向けてくれた。
こういうところも流石なんだよなぁ。
「昨日ちひろ、図書室がおすすめって教えてくれたじゃん。あそこがもう最高で、誰にも邪魔されないし、静かだし、もちろん私以外の人もそこにいるんだけど、話をするわけでもない。それぞれが違う目的でそこにいるから、お互い関わらないし、最高」
「……あははは。みお、よかったね」
(ん?私何かまた変なこと言ったかな?まぁ、いいや)
少しちひろが引いている気がするが、構わず続ける。
「そうなの。寄り道したり友達と遊んだって言うと、母親の機嫌があからさまに悪くなるんだけど、図書室で勉強してきたって言ったら、文句のつけようが無いみたいで、昨日、下校時間まで勉強して帰っても何も言われなかった。勉強せざるを得ない環境なんで集中できるし、家に帰らなくていいってのが何よりも幸せ」
「これからは、何もない日は毎日行くことにする。むしろ、いっそ図書室に住みたい。家に帰りたくない」
「そっかー。でもテスト前は部活も休みになってかなり混むみたいだから気をつけてね」
「授業終わったら、速攻で行く、ダッシュ、ダーッシュ!」
やっぱり、いつもテンション高いちひろがめちゃくちゃ引いてる気もするけど、よしとしよう。
「でも、そんなに良いなら、私もテスト期間で陸上部が休みになったら図書室で勉強しようかなー」
「いいと思う! 塾に行くと、そっちにも自習室があるって聞くけど、今は図書室がおすすめです!」
1回しか行ったことがないのに、少し舞い上がりすぎていたかもしれない。
ただ、初めて誰にも干渉されないような自分だけの場所が見つかったような気がして、この時は嬉しいという気持ちをどうしても抑えることができなかった。
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