【えちゅーど】7. – Rescuer in the DARK!!

登場人物

悠妃(ゆき)

高校1年。チカとは小学校からの付き合い。都内のマンションに一人暮らし。
話し方が悪いのは親しい人の前だけ。
悠妃の親密度のバロメーターともいえる。
誰も気が付かないけど・・・

チカ

高校1年。悠妃とは幼馴染。
実は悠妃が自分にだけ素で接してくれることが嬉しい。
告白したのも、好きだという感情の他に、いつか他の人に悠妃を盗られてしまうのではないかと思い、焦ったからという理由もある。

本文

(私のせいだ、私がもっと注意すれば…………。怪しいと思ったんなら、最初からチカにそう話して、一緒に行動すればよかった)
 
 いくらなんでも監視カメラはそこらじゅうについているし、ナンバーも覚えている。
 すぐに警察に連絡をすれば、いずれチカを攫った連中は捕まる可能性が高い。
 ただ、チカが無事かどうかは、全く別の問題だ。

「くそっ、引きこもり、舐めるなよ!」

 背中のバッグから、サブのスマホを取り出しアプリを起動させ、立体駐車場の出口に向けて走り出す。
 同時に、先ほどまでチカと連絡を取っていたスマホで警察に通報。
 電話に出たオペレータに、友人が誘拐されたこと、ショッピングモールの名前、車の車種とナンバーを短く繰り返し伝えて助けを求めた。
 電話口からは何か私に向かって話しかけているが、そんなことに答えている暇はない。
 
 私には今ここで、まだできることがある。

「こっちも車追いかけてるんだ。そっちはそっちで、早くできることをしてくれっ!」

 スマホの通話口にそう叫ぶと、私はスマホをポケットにしまい、先ほど取り出したサブのスマホの地図画面に、チカの居場所を示すアイコンが表示されているのを確認した。

「ザマーミロ、まだこのあたりにいるじゃねーか」

 立体駐車場のエレベーターがやけに混んでいたので、駐車場の精算所も同じく混んでいると思っていた。
 
 予想は的中し、誘拐犯はまだショッピングモールの駐車場から出られていないらしい。
 ただ今は足止めされているが、それがいつまでもつか分からない。
 この瞬間に、チカが安全な状態でいるのかも…………。

(頼む。頼むから…………。私から、チカをとらないで…………)

 下のフロアに進むにつれて車が増えていき、二階のフロアに降りる頃には出口に向かって渋滞をしていた。
 一階から立体駐車場のエリアを抜けたところで、再び地図アプリを確認すると一番近い出口の方へアイコンがゆっくり移動している。

「間に合え!」

 体はとうに限界を超えており、足がもつれる。
 息をするたびに肺が痛い。

(いた! 見つけた!)

 二台並ぶ精算機の左の列の先頭から三台目くらい。身動きが取れない状態でいる。

 相手に気づかれることを避けるため、一旦、犯人達の車を避けて右の精算機側から回り込み、バンの前で精算のために窓を開けている運転手に向かって叫ぶ。

「はぁ、はぁ、すみません……後ろの車に……、友達が誘拐されたんです。すみませんが、このまま発進しないでください! お願いします!」

 汗だくでボロボロの人間から思いもよらない場所で声をかけられ、どうしたらよいか分からず曖昧な返事をされる。
 
「お願いします!」

 私はもう一度そう叫ぶと、後ろの列に並んでいるバンを睨みつける。
 チカを乗せたバンの運転手は明らかに慌てていて、前後に逃げ道がないかを探しているが、精算の列に並ぶ車に挟まれているため、どうすることもできない。
 
 私は先ほどしまったスマホを取り出してまだ通話中であることを確認すると、大きく深呼吸をして息を整え、もう一つのスマホの画面とともに、バンに向かって見せつけるように掲げた。

「位置情報でバレてるし、いまこの瞬間も警察に繋がってんだよ! チカを今すぐ返せ!」

 異常事態をどこかで見ていたのか、遠くから警備員が近づいてくるのを目の端で捉える。
 バンの運転手は、なにやら大声で後部座席の人間に何か叫んでいる。

 次の瞬間、後部座席のスライドドアが開くと、手を後ろに拘束されたチカが投げ捨てられるかのように勢いよく押し出され、上手く着地ができずに崩れ落ちる。
 続いて、チカの荷物のベースも後部座席から投げ捨てらたが、チカから位置からは車内の様子がよく見えていていたのか、起き上がると自分の身も顧みずに自分の体でベースを受け止めた。

「ばか! ベースより自分の心配しろ」

 慌てて駆け寄り、ベースと共に横たわるチカを庇うように抱きかかえる。
 バンの前で進路を塞いでいた私がいなくなった隙に、バンはけたたましいタイヤの音をあげ前方の車に体当たりし、押しのけるように精算の列を強行突破し、ものすごいスピードで走り去っていった。
 
「悠妃………………助けてくれて、ありがとう」
「…………ごめん。チカ」

 ポタポタと涙が溢れチカの頬を濡らす。
 チカは私が泣いていることに驚いたのか、一瞬大きく目を見開くが、すぐに安心した顔になり、目を優しく閉じた。

「悠妃、あったかい」

 足に力が入らず、立ち上がることができない。
 周りには、駆けつけた警備員、並んでいた車列から降りてきた人が集まり、口々に何か口にしている。
 
 先程誘拐犯のバンに体当たりをされた車に目をやると、車の後部が酷い有り様だったが、運転手の男性と目が合うと、笑顔で頷き、ピースサインを返してくれた。
 
 私は再びチカの方に向き直る。
 
「チカ…………」
「なに。悠妃」
「おかえり」
「うん。ただいま」
 
 私は、チカを包み込むように抱きしめると、そのまま意識を失った。

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